青磁堆磁線文鉢
個人蔵
H13.0×W53.0
2011
Photos by: Kenji Yamazaki
<作品の制作意図>
受賞作品の制作にあたりまして新たな展開にずっと悩み続け考えておりました。
従来の出品してきました白磁の作風から離れる事が出来ず、イメージがなかなか沸きおこらず悶々とする日々が続きました。
ある日、禅寺の和尚さんに出逢うことがあり「啐啄(そくたく)同時」と言う禅語を教授されました。
その意味合いを聞きますと、ひな鳥が孵る時ひなが卵の内から殻をつつくのと親鳥が外からつつくのとはまさに期が熟した時、同時でなければうまく孵らないと言う、あるきっかけから即座に何かを悟ることだと教えられました。
今回の作品の誕生にあたってはまさに「啐啄同時」でありました。イメージに悩み抜いた時にいつもは見慣れている琵琶湖の風景がその時は違うように見えました。
空の色を映した湖の青、波の白、そして力強い水の動きが目に飛び込んできました。
「これだ!」作品のイメージはすぐに固まり、焼き上げの雰囲気さえ見えたのでした。
水の持つ迫力、力強さを造形表現した作品です。
【NHKテレビ放送『日曜美術館』ナレーション(2009’ )】
釉薬の使い方が作品のもう一つの魅力です。線模様は白く、そのキワから右側へほんのわずかに、白から水色のグラデーション。
琵琶湖の白波から思いついた色使いです。
釉薬をコンプレッサーで均一に掛け、それを数回繰り返し、厚みをもたせます。カンナを器に対して斜めに当て、釉薬を斜めにそぎ落とします。
薄い所は白く、厚い所は青く発色するのです。繊細なグラデーションが、湖の絶え間ない揺らぎを思わせます。